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短編集 一区間のラブストーリー
第11章 第十一話
男は3流大学の学生だった
裕福な学生生活ではなかったため
夏祭りが開かれている神社の境内で
金魚すくいの露天商のアルバイトをしていた
祭りが終わりかけて夜も更けてくると
子供たちも帰宅してしまい
客足もパッタリと途絶えた
さて、そろそろ店じまいするか…
そう思って腰を上げようとしたそのとき、
一人の女の子が
「わあ~、金魚、かわいくてきれい~」と
はしゃぎながら水槽の前にちょこんとしゃがみこんだ。
派手な化粧をして大人ぶっているが
おそらく高校生、いや、中学生か…といった年齢だと思われた
「あ、ごめん、そろそろ店じまいを…」
そう告げると露天の後片付けが珍しいからと
女の子は一生懸命に手伝ってくれた
夜も遅いし家まで送ってあげると申し出ると
実は家出をしてきたのだと告白した。
警察に届け出るべきなのだろうが
男は女の子の笑顔に惹かれ、
気づけばアパートの自室に彼女を招き入れていた
「とりあえず乾杯しようか…」
男は彼女が未成年であろうとわかっていながら
グラスにビールを注いであげた
彼女は舐めるように少しだけビールを口に含むと
「苦い…」と言って顔をしかめた。
どうやらビールの味さえ知らないようだった
大人ぶってはいるものの、
根はまだまだ純情な乙女なのかもしれなかった。
「シャワー…使わせてもらうね、」
数分後、彼女はバスタオル1枚だけを体に巻いて男の前に現れた。