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短編集 一区間のラブストーリー
第12章 第十二話
「ケーキいかがですか~♪クリスマスケーキどうぞ~♪」
明るい声とは裏腹に、
恵美子の体は冷え切っていた。
友人からコンビニの店頭販売のバイトがあるよと紹介されて
二つ返事で飛びついたものの、
まさかこの寒空にミニスカサンタの衣装を着させられるとは思ってもいなかった。
背中にカイロを忍ばせていても
体の芯から冷え込んだ
『なんでミニスカサンタなの…』
さあ、これが衣装ですよ。
よろしくね~ そう言ったときの店長のいやらしい顔を思い出した。
振り返って店内を見渡せば、
暖房のよく効いた店内でニヤニヤしながら店長が恵美子のボディを観察してた。
「寒いでしょ?大丈夫?」
ケーキの補充にやってきた同じくバイトの男の子が、
心配そうに恵美子に声をかけた。
「寒いってものじゃないですよ~
ケーキも思ったほど売れないし…身も心も凍りそうだわ」
バイトを紹介してくれた友人本人は用事ができたといって さっさと退散してしまった。
「あの…この後、バイトが終わったらお時間ないですか?」
仲良くしゃべっていると店長から叱られるのか、
それとも照れくさいからか
男の子は目をそらしながら恵美子に話しかけた。
「いえ…特に用事はないですけど」
彼氏がいてデートできるのなら、
こんな寒空にわざわざバイトなどしていない。
「じ、じゃあ…クリパ…しませんか?
あ、口説こうとかそんなんじゃないんです
俺、友人も少なくて、たった一人のクリスマスイブなんて寂しいから」
高校生だろうか?
大学生の恵美子からしてみれば、
まるで弟のような感覚だった。
「いいわね、クリパやりましょうよ」
あまりの初々しさに恵美子は二つ返事で快諾した。