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蜜と獄 〜甘く壊して〜
第5章 【絶頂地獄の成れの果て】
「そうね、100万回くらいかな」
「絶対それ教えてくれないやつじゃん」
「普通は教えないの、真面目なのも私のウリなんですよ?」
「絶対絶対手に入らないってわかってるけどその気にさせるのは流石No.1なだけあるよね」
ジャケットを広げて腕を通させる。
着せてあげたらボタンを閉めながらもうお別れの時間なんだけど。
何度も振り返り溜め息をつく。
帰りを惜しんでいるのかと思うと可愛く思えた。
「あ……やべ、持って帰りたい、この後の時間全部買い占めたい」
「んふふ、残念ながら指名が埋まってまして」
「だよな?次もいつ指名取れるかわからないって最初言われたよ、今日みたいに駄々こねたら良い?」
意外と子供っぽくて笑いそうになったけどご自身でもそれに気付いててちょっと拗ねてる。
ジーッと見つめ返したら逸してくるからそっと頬を包んで目線を奪う。
「少しの間会えないけど、今日は楽しかった……指名してくれてありがとう、次に会えるまでこれで我慢して…」と踵を上げる。
また、マジックミラーからは死角になるところだが私は迷うことなく唇を近付けて………チュッと重なる唇の間には名刺。
目を合わせてクスッと笑う。
「ヤバ……めっちゃドキドキした」
意外とこういうのには弱かったりして。
小さく手を振りお見送りしようとしたら。
「あー!マジで素顔見てぇ……いつかはチラッと見せてね?俺、その為に通っちゃうからね?」
「え……それはちょっと…無理な話ですね、抜きには来てください」
「はぁー、わかった、またね」
何とか納得して帰って貰ったけどあんな感じで良かったんだよね…?
仮面外して前髪を整えていたら案の定廊下で横から引っ張られ連れ去られた。
やっぱりちょっと怒ってる。
使ってない部屋に連れ込まれドアを閉めた途端、強引に重ねてきた唇。
勢いで脚元に仮面落としちゃった。
わかってる………多分見てたよね。
今までにない接客だった。
ギリギリのラインばかりでどれも際どかったから。
新規でここまでするのは有り得ないって怒ってるんでしょ?