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Kiss Again and Again
第10章 裏切り

  珍しく 「金曜日は定時に上がれるから おうちデートをしよう」と 海から連絡がきた。 「資格試験の勉強があるから 土曜日も終日 家で勉強の予定」
 そんなことは久しぶりだった。

 海からのお誘いには お腹を空かせた子犬のように 何にでも尻尾を振ってしまう。

 金曜日の夜は グラタンに初挑戦するつもりで グラタン皿と材料を買い揃え 待ち合わせをして 海の部屋に行った。 グラタンは 思っていたより上手にでき 海が時々手伝ってくれて 穏やかで楽しい夕食になった。 海が勉強をする傍らで 静かに本を読んだ。
 海のやることがひと段落し 「大分進んだよ。 あゆ ありがとう」


 ひとつのベッドで 満ち足りて 兄妹のように労わり合い 寄り添って眠った。

 温かく深い眠りの後は 健やかな目覚めがあり 香り高いコーヒーとおはようのキスがあり お互いへの優しさと思いやりにあふれた時間があった。

 パソコン相手に疲れると 海は 本を読むわたしの膝にクッションを置き そこに頭をのせて 資料に目を通した。 その頭の重みにうっとりと満足し ページをめくりながら 時折海の髪に手をいれたりした。

 海は 自分がコーヒーを飲みたくなったら 「あゆも飲む?」と聞いてくれ 可愛いマグカップに熱いコーヒーを注いで 持って来てくれる。

 窓から差し込む日差しもまぶしすぎず 必要なものは全て揃っていて すぐにでもまどろめそうな 完璧な休日だった。


 静寂がゆらめいているような時間だったので その音に 二人とも すぐに気がついた。 


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