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Kiss Again and Again
第10章 裏切り

 車の中での会話は 楽しかった。 樹さんは 色々なことを経験していて 舞台の話題では ずっと笑いっぱなしだった。 そのせいで あっという間にマンションに着いた。

 「ここで待っているから」

 その言葉は 思い出という針で 胸に刺さった。
 「いえ・・・ 待たないで」
 樹さんは 何かに気がついた。
 「じゃあ 今日はここまでということで。 また 遊びにおいで」
 「・・・・・」
 「あゆちゃん。 また 来てくれる、って言うまで帰らないよ」
 「・・・じゃあ また・・・」
 「指きり しよう」
 「えっ?」
 「また 会う、って 指きりしよう」

 本気で言ってるの? 樹さんの顔を まじまじと見た。 少し笑っているけど 美しい小指を立てて 待っている。 指きりなんて いつ以来? 右の小指を絡ませた。

 「指きりげんまん。 うそつかないで」
 それから わたしの小指にキスした。


 樹さんの車を見送ると 海の車を見送った切ない きりりと胸の痛むいくつかのシーンを思い出した。

 こんなことしている場合じゃあない、と思った。 はっきり 海と別れようと思った。 初めて 決心できた。


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