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Kiss Again and Again
第3章 ジャズダンス
 
 そのまま 大学は春休みになり 家庭教師を辞め ほぼ二ヶ月を 自宅で過ごした。


 眠れぬ夜が 続いた。

 何度も 何度も 同じような夢をみた。 腕を掴まれ 床にたたきつけられる。 起き上がることができず 両手 両脚が なくなっている、そんな夢を見続けた。

 恐ろしくて 眠るのが怖かった。
 物音に怯えたり 人から触られることを嫌悪したりして 引籠もりがちになった。

 脳震盪で運び込まれた病院で紹介してもらい 地元から少し離れた町の 精神科の診療を受けることになった。

 自分が こんな病院に行くことが信じられなかった。 付き添ってくれるおかあさんに こんなことは必要ない、と伝えたかった。

 でも 実際に外出してみると 人ごみが怖くて ひとりで電車に乗ることもままならなかった。



 一時間ほどの診療をおかあさんと一緒に受け 抗不安薬や 睡眠導入薬などを処方されることになった。

 病院の待合室での 人の多さに驚いた。 
 待っている人達は 外見は普通の人に見える。
 サラリーマンのようだったり 家庭の主婦のようだったり 高齢者だったり。
 その中に座ると 自分がおかしくなってゆくのではないかという恐怖が 少しだけ小さくなった。

 薬局の窓口で処方箋を渡し おかあさんとソファに座って待っているとき。

 わたしより2,3歳くらい年長の女性が名前を呼ばれ 窓口で 白い小さなビニール袋をふたつ受け取った。 わたし達の隣のソファに座っている年配の女性の所に近づくと 「クソババァ!」と怒鳴り いきなり持っていた袋を投げつけると 出入り口へと走って行った。


 薬局のスタッフが 大急ぎで駆けつけ 散らばった薬を ソファに座っていた年配の女性と 集めている。

 全身から 汗が噴出し 小刻みな震えが始まった。
 おかあさんは わたしの肩を抱いてくれた。
 おかあさんは 泣いていた。
 生まれて初めて おかあさんが泣いているのを 見た。

 申し訳なかった。
 自分自身と おかあさんのことが 可哀想でならなかった。



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