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Kiss Again and Again
第15章 クリスマス後


 性急に荒々しく求められることは 次第になくなっていった。
 樹さんは 穏やかに 大切なものを扱うように わたしを抱いた。
 キスするときは むさぼり尽くすような 長いキスをした。
 愛撫は 穏やかでありながら 的確で 甘く 残酷だった。 いつも翻弄され 征服された。

 そして 気だるい身体を深い胸に埋めたときには 必ず寂しさが訪れた。


 樹さんの柔らかい胸毛をいじりながら
 「あのね 卒論は 『キリマンジェロの雪』にしました」
 背中を撫でていた手がとまった。
 「凍った豹の話?」
 「はい。 あの豹は 頂上を目指していたのだと思って」
 
 美しくしなやかな孤高の生き物。
 決して群れず 従わず 常に飢え 生命の際にいる。

 「頂上から見える世界を眺めるために キリマンジェロに登ったのだと思って。 きっと途中で なんでこんなことやっているのか、 こんな苦しい思いを 何のためにしているのだろう、って足を止めたのだと思うの。 自分には 頂上まで辿り着く力がないのじゃあないかと 疑心暗鬼になって。 つい休んでしまったから凍ってしまい 先に進めなかったのだと思うのよ。 迷わず 進み続けなければいけないのに」

 この胸毛は 気持ちが良くて愛おしい。

 「樹さんは 豹じゃあない。 途中で休んで 凍ってしまったりしない。 頂上まで登って そこからの世界を見る人だと思います」
 「卒論に そう書くの?」
 「ううん。 主人公は 死んでしまうのだから 頂上には行けない。 行けたかもしれないのに 行けなかった。 それなのに 後悔ばかりして。 その怠慢さと愚鈍さを罵るの」
 「怠け者は 罵られるの?」
 「だって 手に入れることができたかもしれない別の人生を 自分の愚かさのために失ってしまったと嘆きながら死んでゆくのですもの 罵らなくっちゃ」

 樹さんは ハートの連なったリングを着けている小指を口に含み
 「あゆちゃんに 罵られない人生を送りたいものです」

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