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Kiss Again and Again
第16章 最後の扉

 家庭教師からの帰路 ぼんやりひとつ電車に乗り損ね いつもの時間より遅い帰宅だった。
 マンションの前に ハザードが点滅している車が停まっていた。

 樹さんの車だ。

 覗きこむと 樹さんは いつかのように腕組みをして 運転席で眠っていた。 この寒空に エンジンもかけず。
 窓ガラスをたたくと びっくりしたように 大きな目が開いた。 内側から 助手席のドアを開けて
 「おかえり」
 「いつから ここで待っててくださったのですか?」
 「少し前だよ。 寝ちゃった」
 車の中は 外より冷え込んでいる。
 「こんなことしたら また風邪をひいてしまう」
 「そしたら また うどんを作りに来てくれる?」

 樹さんは またグレーのセーターを着ている。

 泣きそう・・・

 わたしが乗り込むと やっとエンジンをかける。

 「お茶でもいかが、って聞いてくれないの?」

 驚いた。 決してわたしの部屋を訪ねない樹さん。
 そして 海が 意地悪をされたわたしを送ってくれた時に 同じことを言ったのを 瞬時に思い出した。 それから始まったつらい恋。

 かちり、とストッパーが降りた。

 「明日提出のレポートがあるから」

 
 どんどん 嘘が上手になる。

 「樹さん エンジンもかけないで。 寒かったでしょう?」
 「エンジンをかけておくと 通報されることがあるから。 そうしたら せっかく待っていても あゆちゃんに逢えない」

 樹さんの手は びっくりするほど冷たくなっていた。 とても「少し前」とは思えない。 大きな手を挟み 擦りながら息を吹きかけた。 胸が締めつけられる。
 いつもわたしの手の方が冷たいのに。

 「もう こんなこと したらだめ・・・」
 「怒られちゃった」

 以前だったら 「朝までだって 待つ」と言っただろう樹さんは 帰った。

 また 遠ざかるテールランプを 寂しく見送る。
 寂しくしてしまっているのは わたしなのに。 

 ただ 傷つきたくないだけで。

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