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Kiss Again and Again
第16章 最後の扉

 大学から 海岸沿いの道を 純子ちゃんの結婚の話で盛り上がり ドライブした。
 「あのじゅんが結婚なんて まだ信じられない。 式は 秋になるかもしれない。 それでも はやいよね」

 少し 寂しそう。
 ごめんなさい。 そんな時 あなたのそばにいなくて。

 樹さんは ホテルの駐車場に車を乗り入れた。
 「わたし こんな格好で 大丈夫ですか?」
 「うん。 そんなに改まったところじゃあないから。 何度か うちを利用してもらっているんだ」

 でも 学校へ行く普通の格好なんだけど。 樹さんも シャツ姿だし 大丈夫よね、と思っていたら 後部座席から ジャケットと紙袋を取った。 

 エレベーターを最上階で降りると 紙袋を差し出し
 「これはね 就職祝い。 じゅんの結婚式にも着るといいよ。 そこのエチケットルームで 着替えておいで」
 「えっ? 着替えるんですか? これはお洋服ですか?」
 「靴までは わからなかったから。 でも今日はいている靴で大丈夫だと思うよ。 お祝いするんだから お姫様になっておいで」

  優しい笑顔に 抗うことができず 言われたとおりにした。

 白い薄紙に包まれていたのは 眩しいくらいの緋色のワンピースだった。 今まで着たこともない色。 高梨さんと会った時に着せてもらった振袖より鮮やかな赤色。

 樹さんが 選んだの?

 いくらか落ち着いた色味の赤いレースのほっそりしたハイネックのワンピースを 透けた緋色のシフォンがふっくらと覆っている。 腋の下あたりが少し大きめだったけど サイズはぴったりだった。 胸元が空いていないので アクセサリーはつけなくてもいい。 樹さんが言ったとおり 今日はいているローヒールのワインレッドの靴は かろうじて合っている。

 脱いだ服を 紙袋に畳んで入れようとして もうひとつ小さな紙袋があるのに気がついた。 空けてみると 口紅だった。

 ドレスに合わせた 見事な赤い口紅。

 こんな細やかな気遣いのできる 繊細で温かい人を わたしはどれだけ・・・ 
 寒い夜 車で待っていてくれた樹さんの冷たい手を思い出す。 どんなに酷いことをしてしまったか。

 零れ落ちそうな涙を我慢すると 唇が震え うまく口紅をつけることができない。

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