この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
Kiss Again and Again
第18章 再 会

 樹さんのいない日常は 何も変わっていないかのように 陽が昇り 沈んだ。

 逢わないことと 逢えないことは 大きく違う。

 樹さんがいない、 声が聞けない、 キスがない、 安全日が意味をなさない、 悲しい、 それらはバラバラで ひとつづつだった。 樹さんが頂上に立つことと いなくなってしまうことは 繋がっていなかった。 時間が それらを 繋げてゆく。 全てが繋がると 寂しさになった。

 目が醒めて 会社に行くことは ありがたかった。 何かに所属していて ひとつの歯車であることは 動き続ける唯一の恩恵だった。 夜は 恐ろしかった。 ひとり部屋にいると 何者でもない自分しかいなくなった。 どこにも属さず 誰の所有物でもなくなることは つらかった。
 意味もなく疲れ 食事を摂らないまま お化粧もそのままに 着替えもせず シャワーも浴びず 眠ってしまうことが多くなった。 それでも 朝になると 世の中が動き始め また 目的のある生活が始まった。

 痩せてしまい 樹さんの 「もっとしっかり食べなきゃ」という声が聞こえるような気がして 泣きながら眠った。

 こんなにつらいはずはない、と 何度も自分に言い聞かせた。
 わたしは あの特別な人を 縛りつけなかっただけなのだと言い聞かせた。

 隣に眠る人などいないのに 狭いベッドの壁際にくっついて 丸くなって眠った。

 少しすると 自分を励ましたり 叱りつけたりすることをやめ 悲しみに潜むことを選んだ。


 樹さんは 「待っていて」とは言わなかった。 裏切りが匂うようなことは 決して言わないことはわかっていた。
 わたしも 「待っている」とは言わなかったし 「行かないで」とも言わなかった。

 臆病な子ウサギが逃げ込んだ穴は 居心地が良いわけではないのに そこから這い出すことはできない。


/464ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ