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Kiss Again and Again
第19章 恋愛事情

 なんだか海は 昨夜より生気がある。 眠りがよかったのか 表情に明りが灯っている。 ちょっと ほっとしたりして。
 せっかくだから りんごを剝いた。
 「剝くの 上手になったね」
 「そう?」
 「前に剝いてくれたときには りんごが可哀想になるくらい小さくなっていたから」
 「そ、う、・・・だったかしら・・・」

 確かに 下手だった。 芯を取るのも下手で。 樹さんが りんごが好きだったから 家でも できるだけりんごを買い置きして練習したのだ。 今でも つい、りんごを切らさないよう買ってしまう。

 日常は続いてゆくのに 樹さんだけが いない。


 「運転免許 とったんだ」
 「はい。 履歴書に書く資格が 少しでも多い方がいいかな、と思って。 どーして知っているの?」
 「ん? この前 バッグを忘れたでしょう? 足元に落ちていて 口が開いて中身が出ていたから」
 「あのとき バッグを届けてくださって 本当に助かりました。 会社にも電話できないところでした」

 海は 口角を上げただけの笑顔をつくった。 目は笑っていない。

 「あゆが運転なんて 想像できないなぁ」
 「下手です。 免許取りたてのころは お父さんと練習がてら よくドライブに行ったけど 最近は 全然乗っていないので もっと下手になっていると思います」
 「運転すること ないの?」
 「ないです。 きっとこれからも 当分ないと思います」
 「僕と 練習する?」
 「えっ・・・?」
 「僕が助手席に乗るから 練習する?」
 「そんな命がけのこと お願いできません」
 「命をかけなきゃいけないくらい 下手なの? じゃあ いよいよ練習しなくちゃ」
 「しません」
 「今日は いいお天気で ドライブ日和だよ」
 「しません」

 海は 目を伏せて コーヒーを飲んだ。
 「僕を 許して」 そう言っているようだ。

 本当は 言葉ほどの頑なさは 今はもうなくなっていた。 昨日の海の告白が 折れた羽を広げて引きずり 飛ぶことが叶わない小鳥を手の平で包むような慈しみを わたしの中に生まれさせた。

 一度も「あいたい」と言わなかった冷淡な恋人だったわたしに 許しを請わないで。

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