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Kiss Again and Again
第20章 初 冬

 オートロックのところに ぼろきれのようにうづくまっている酔った海がいた。

 「今日は 蹴飛ばされたの?」
 しゃがみこんで 海の顔を覗きこむ。

 「着拒にした?」
 「・・・」
 「そんなに僕がキライ?」

 洞穴のように暗い目。 
 「あゆ・・・ なにか あったの?」
 きっと わたしも そんな目をしてる。

 「今に 病気になりますよ」

 立花海 いつまで迷子でいるつもりなの?

 「今日は 特に冷え込むから」

 お願い。 もうこんな風に ぐしゃぐしゃになったりしないで。 あのパーフェクトさを取り戻して。


 両手を引き 立ち上がらせると そのまま抱きしめられた。
 「僕を 切り捨てないで」
 振りほどくことができず そのまま部屋に向かった。

 今日なら お酒のせいにできる。 樹さんのせいではなく 酔ったせいにできる。 わたしは 弱い女なのだ。

 どうやってここまで辿り着けたのか、というほど 海の足取りは危うかった。
 もう 慣れてしまったかのようにラブチェアに倒れこむ。 海のコートと上着を一緒に脱がせ ハンガーにかけていると

 「あゆは 普通にそんなことしてくれるけど」
 服を片付けること?
 「酔っ払った僕の服を片付けてくれるとか ベッドに入れてくれるとか 服にアイロンかけてくれるとか 朝、 コーヒーを淹れてくれるとか 普通にするけど」

 普通じゃあ ない?

 「それは 特別なことなんだよ」
 「いいえ 特別なんかじゃあない」
 「僕にとっては 特別なんだ。 そんなことしちゃあいけないんだ」

 海・・・ 何を言っているの?
 もしかして 無意識にやってきたことさえ あなたを傷つけていた?
 優柔不断の態度が 思わせぶりだった?

 「そんなことをしてもらうと 許してもらえたのかと・・・ 僕は また特別になれるんじゃないかと・・・」

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