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女優
第9章 温泉ルポ

「それってバスタオルを捲いて温泉に浸かって
泉質とかをレポートするお仕事ですよね

『まあ…そんな感じだけど…
さすがにうちに依頼してくる仕事だから
バスタオルはなしでオールヌードで
温泉に浸かってもらうんだけどね…』

仕事とはいえ、タダで温泉旅行が出来るなんて
こんなおいしい仕事を断るバカはいない。

「やります!そのお仕事、私に下さい!!」

依頼を受けると、事はスピーディに進んだ。

翌朝にはキャリアケースを転がし、
愛子は羽田空港の待合場所にいそいそと出かけた。

待ち合わせ場所には
マネージャーとカメラマンらしき男と
監督とおぼしきオヤジが愛子を待ち受けていた。

「愛子ちゃん、時間ぴったりだね~
あ、こちらは今回の仕事の
監督さんとカメラマンさんです」


マネージャーの紹介を受けて「監督の安岡です」と
軽く会釈をしながらよろしくと握手を求めてきた。

「よろしくお願いします」と愛子が手を握ると、
安岡はもう片方の手も覆い被せて
何度も何度も愛子の手の感触を楽しむように撫でた。

その触り方がなんとも気持ち悪かったが
とにかく気持ちよく仕事をこなすために
笑顔で応えた。


「で、こちらがカメラマンの…
えっと…なんて名前だっけ?」

間抜けなマネージャーは
カメラマンの名前をど忘れしてしまっていた。

「近藤です」と名乗り、
握手なんかしないぞとばかりに
カメラバッグを大事そうに抱きかかえた。


ちょっとふてぶてしい態度だったので
カチンときたが
その感情を押し殺して「宮崎愛子です。よろしくお願いします」と深々と頭を下げた。


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