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抱き屋~禁断人妻と恋人会瀬
第2章 藤月美咲 26歳アニメ声のおねだり妻
(そう言えば、前に似たような風景を見た気が…)

 仮眠用のソファの上に読み差しの本があった。バタイユの『眼球譚』である。
(そうか)
 佐伯はふと、その本のことを思いついた。少し前、抱いた女子大生がフランス文学の専攻で面白い話だと聞いて、Amazonで取り寄せたのだが確か、興味深い描写を見つけたのだ。

「エロティシズムとエロは別物、なんだって」
 と、どこかの誰かの口伝えをその女子大生はうそぶいていたが、文学が表現する『触覚』は意外とセックスと結び付きが深いのではないか、と、佐伯は本を読みながら考えてしまった。
 古くは日本でも谷崎潤一郎などが、髪の毛や唾液といったフェティシズムをテーマにした作品を描いているし、この『眼球譚』にも、それらしいそそる描写が出てきたのだ。
(これだ)
 ティラミスをぱくつきながら一人、佐伯は文字を追った。そうだ、さっきの既視感は、「見た」ものでなく、文字で「読んで」から頭の中に形作ったイメージだったのである。

 それは、冒頭の猫用のミルク皿に下半身裸で座り込む、シモーヌと言う少女の描写だ。シモーヌが見せつけてきたミルクにまみれた『ピンク色と黒色の肉体』の淫らさを、佐伯は今、美咲のそれで実見してきたばかりだ。
 セックスは、どの五感も十分に働かせて楽しむのが一番なのである。ヌルヌル、テラテラなど視覚は触感を想起させ、触感や嗅覚は目の当たりになる淫らな光景を仄めかさせる。
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