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陽炎日記
第5章 エピローグ
 雨が振っていた。
 街灯もない田舎道。
 夜中に缶ビール片手に微酔い加減で歩いていたら激しい衝撃を受けて身体がぶっ飛んだ。
 グワングワンする頭で「撥ねられた」と思い至ったのはどれだけ時間が経っての事だろう?
 遠くでザワザワとした騒ぎと車が走り去る音がしたからものの数秒だったかも知れない。
 轢逃げ?
 いや影が薄すぎて倒れているのにも気付いてなかったのかもしれない。
 嗚呼。これで人生終わりか。
 色々あったけど楽しい一生だった。
 いろんな女を抱いた。
 下は小学生から上は生理があがった婆まで。
 手当たり次第。
 やりたい放題。
 影の薄さで楽しめたんだ。 
 影の薄さのせいで死んでも仕方がないさ。
 嗚呼。
 段々考えれなくなってきた。
 なんだ。
 三途の川もお花畑も出てこないじゃないか。
 霊能者のう・・・そ・・・つ・・・

 夕刊の片隅に身元不明の初老の男が車に撥ねられて死亡したという記事が載っていた。
 影が薄かった男は死んで初めてその存在を世間に知られた。
 だがその記憶も十日もせずに忘れ去られる。
 影が薄かった男は結局何も残さずに消えていった。
                    
                       完
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