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キャンバスの華
第1章 上京
次郎は風呂敷袋を背負い、
上野駅に降り立った。
家を捨てて上京したのだ
もう後には退けないという思いからか
ブルっと武者震いをした。
。。。。。。。。。。。。。。。
大正時代、
尋常小学校すら行ったり行けなかったりの時代に
次郎は次男坊でありながら、
両親は彼を溺愛してくれて
高等学校まで通わせてくれた。
成績は校内では群を抜いていた。
師範教師たちは帝国大学への進学を勧めた。
両親もまた家系から
大学へ進学する人材を輩出できるのならと
学費の心配などするなと
大事な田畑をも売り払うつもりでいてくれた。
だが次郎には夢があった。
それは長途遠足(修学旅行)で訪れた東京で、
学友と行った銭湯での事だった。
田舎の銭湯では寂れた建物であったのだが
やはり首都の東京の銭湯はハイカラだった。
湯殿の扉を開いたとたん、
目に飛び込んできたのが大きな富士の絵だった。
『なんとも豪気ではないか・・・・』
元来、絵を書くのが好きな次郎は
学問よりも絵を書く芸術の道に
進んでみたいと思った。
そのことを両親に打ち明けると
烈火のごとく反対された
しかし、次郎は自分の夢を追い求めたいと訴えた。