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キャンバスの華
第4章 風呂屋の壁絵
次郎が華に弟子入りして3ヶ月が過ぎた。
あいかわらず雑用ばかりの毎日だが
それでも少しずつ
絵を書かせてもらえるようになった。
キャンバスと絵筆を渡されて
「自由に描けばいい」と言われた。
「筆使いやタッチの強弱は
見よう見まねで覚えなさい
でも色彩や構図は真似しちゃダメよ
次郎ちゃんには次郎ちゃんの個性があるんだから
それをしっかり表現しなさい」
放任主義のようかもしれないが
絵画は手とり足とりして教えるものではないというのが
華の考えだった。
だが、夜の布団の中ではやさしく
手とり足とり教えてくれた。
若い次郎は飲み込みも早く、
48手を猛スピードでこなしていった。
なによりも持ち物が素晴らしいので
画家で芽がでなければ
女のヒモとして立派に暮らせていけるわと
冗談か本気かわからないが華は次郎にそう言った。
ある日、銭湯が新装するというので
華のもとへ富士山の壁画を描いてくれないかという依頼があった。
まだ看板屋という職業が確立されていない時代だったので
大きな壁画が描ける華は風呂屋からかなり重宝されていた。
一通りの道具を持って依頼のあった銭湯に二人してでかけた。