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キャンバスの華
第8章 別れ、そして新たな旅立ち
もちろん蘭方医を訪ねていくことは
次郎には内緒にしておいた。
「これはこれは絵描きのお嬢さん。
体調がすぐれないのかね?」
最近、若い男と暮らしてるそうじゃないか、
ご懐妊の確認にでも来られたのかな
などと減らず口を語りながら、
まあ、そこへお座りなさいと
診察椅子に腰かけることを勧めた。
華は思いきって気にかかる事を医師に話した
「実は・・・乳房の奥に妙なしこりが・・・」
「ふむ、どれ、診察してしんぜよう」
医師は胸を出して
診察ベッドに横たわるようにと指示した。
華の白い乳房を押したり、
両の手で挟み込むようにして揉みながら
医師の表情がみるみるうちに強張りだした。
「こ、これは・・・」
陽気な蘭方医清庵の表情が曇ったことで、
華は自分の予想が当たったのだと確信した
「先生・・・やはり岩なのですね?」
決して口にしたくない病名を医師に確認した。