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DOLL(愛しきラブドール)
第8章 平穏な日々

「盗まれた人形を取り戻せてよかったですなあ」

年配の警官が西嶋に声をかけた。

ただ、警官は窃盗の届けを出したときに
被害物が人形と記入したので
日本人形を想像していたのだが、

思いもよらぬラブドールということで
少しニヤニヤしていた。


「それにしてもお手柄でしたな」

警官が、片隅で小さくなって
様子を見届けていた季実子さんに声をかけた。


「私、以前に犯人と同じ職場にいまして、
事務をやっていたものですから
置き手紙の字に見覚えがあったんです」


季実子さんの証言と、
先輩が残したメモから指紋が検出され、

過去に交通事故を起こして
指紋を採取されていた先輩が
データーベースから割り出された。


「まあ、これで一件落着ですな
人形はしばらく証拠品として
預からせていただきますが
すぐにでもお返しします。
まあ、返却されたからといっても、
くれぐれもお励みになりすぎませんように」

最後の一言を寄越す時に
今にも吹き出しそうな警官の態度に
西嶋はムッとした表情を浮かべた。

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