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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 277 8月15日午後4時半

「もうアンタはさぁ、わたしの事なんか心配しないでさぁ、仕事を頑張んなさいよ…」
 それが入院している母親の、私への帰り際の言葉であった。

 この8月15日の日中に律子と日光観光へ行き、私だけ途中下車して午後4時半過ぎに母親の病院に、このお盆の帰省最後のお見舞いに行ったのだ。

 母親は軽症なのであるが、心筋梗塞の初期症状で12日から入院していた。
 そして私の帰省の最終日である今日、先の13日に行った父親の10回忌の法要と法事の報告をし、そして今後の私の相続問題等の弟ととの相談結果の報告を兼ねたお見舞いなのである。
 そして、その言葉であったのだ。

 ま、母親なんてこんなモノだろう…
 私はそう想いながらタクシーで駅まで向かう。

 最後はきよっぺだ…

 あの12日の夜から約二日間連絡せずに、偶然、グランドホテルのフレンチレストランの入り口でノンと律子と一緒の処を遭遇してしまった。
 そしてその時、私とはほぼ会話はしなく、連絡もしなかったから結果約三日間経たといえる。

 ノンはうまく誤魔化せそうな気がするが、律子の存在をどう説明しようか…

 適当な事を言って、後でノンと辻褄を合わせればいいか…
 そんな事を考えていたら、タクシーはあっという間にきよっぺのマンション前の駅東口ロータリーに到着してしまった。

 とりあえず出たとこ勝負だ…

 これが仕事上の、過去の営業部時代であったなら、出たとこ勝負は自信満々であったのだが…
 こと、こんな男女の絡みのやり取りとなると本当に自信が無いのである。

 そしてドキドキしながらきよっぺの部屋のインターホンのボタンを押す。

 ピンポーン、ピンポーン…

『…………………』

 無反応である。

ピンポーン、ピンポーン…

『…………………』

 再度インターホンを押したのだが、無反応で留守のようであった。

 居ないのか…






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