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シャイニーストッキング
第14章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり
 48 鈍感…

 わたしは当時その『クラブJ』で女王様然として狂っていて、当然のように彼とも遊んでいた…

 だから、ついこの前、その『クラブJ』の元黒服だったと名乗り出てきた外資系人材派遣会社の営業課長の
「遠藤タカシ」は危険度、重要度が、まるでこの『三山蓮太郎』との比ではないのだ。

 その位に危険な存在なのである…

 そんな目下人気急上昇中の有名俳優が、わたしに昔の遊び仲間として気軽に声を掛けてきたのである…
 杉山くんがポカンとしてしまうのも無理はない。

「さ、佐々木部長ぉ、あの三山蓮太郎とお知り合いだったんすかぁ…」
 杉山くんは興奮した感じでそう訊いてきた。

「う、うん、ちょっと昔ね…」
 そうとしか言い様がない。

「うわぁ、すげぇなぁ、やっぱり佐々木部長はすげぇっすよぉ…」
 そんな能天気な感じで言ってくる。

「すげぇなぁ、カッコいいなぁ…」
 興奮冷めやらぬって感じであった。

 そして彼、蓮がわたしに対して呼んできていた呼称である『ゆかり姫』…

 その『…姫』と呼ばれていた事には全く気付いていない様であり、そしてだから当然の様に、その『…姫』と呼ばれる様な由来的な意味にも全く気付いていない…
 と、いう事でもあるのだ。

 よかったわ、一緒にいたのがこの杉山くんで…

 この自称『シロウト童貞』の、こと男女間の関係に於いては鈍感な杉山くんだからこそ全く深く考えはしないし、気付いてもいない、そして気付く様子もない…
 これが違う人だったならば、あの会話の一発で、わたしの過去に疑念、疑問を感じ、懐疑的な想いを抱くのは普通であったであろう。

 だが、この目の前の純粋で鈍感な杉山くんは、俳優の三山蓮太郎に会ったという事がまず第一の優先順位であり、次にわたしと知り合いであったという事が第二事項であって、会話の内容の深読みは、想像すらしない、いや、出来ないのである。

 本当によかった…

 この杉山くんで…

 だが、新たな、この黒歴史の生き証人である有名俳優の『三山蓮太郎』との再会には…

 悪い予感しかしなかった…

 



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