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シャイニーストッキング
第14章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり
 111 稲葉ディレクター…(1)

「いやぁあの土井ちゃんからさぁ、担当営業の女部長さんが凄い美人さんだって聞いたからスカウトに来たんだよ…」

 土井ちゃん…
 このテレビ局側の『新規業務案件』の担当者である。

「スカウトって?」
 ここで初めて杉山くんが口を開く。

 そして昨日の『三山蓮太郎』に続いてわたしの知り合いがいる事にも驚いているようでもあった…

「え、あ、うん、ウチでやってる経済ニュース番組のコメンテーターにさぁ…」
 と、稲葉ディレクターは言ってきた。

「ええっ、あのニュース番組のぉ?」
 杉山くんは驚きの声を上げる。

「も、もぉ、なにをバカな事云ってんですかぁ…
 確か、昔もそんな事云ってましたよねぇ…」
 わたしは誤魔化す意味でそう言ったのだが、逆に火に油を注ぐカタチになってしまう。

「おぉ、うん、そう、昔はアレだよ、美人女子大生のレポーターにスカウトしてたんだよなぁ」
 
「うわぁ、美人女子大生レポーターっすかぁ」
 と、杉山くんは更に興奮してくる。

「そう、美人女子大生レポーターさ、あの時やっていたら、人気抜群になってたかもなぁ」
 稲葉ディレクターはそう呟く。

「いや、いいえ、きっとAV女優になってましたよ」 
 と、わたしは精一杯キツメな声を出してそう言った。

 実は、この稲葉ディレクターはあの当時、AV女優のスカウトも盛んにやっていたのである…
 そして彼の甘い言葉に乗って、迷わされ、挙げ句にAV女優に陥った彼女達を数人ほど見て知っていた。

「あ、いや、お嬢さんは相変わらずキツイなぁ…
 でもさぁ今はさぁ、ちゃんと…あ…」
 と、稲葉ディレクターは自らボロを出してしまう。

「ほらぁ、やっぱりねぇ…」
 わたしは呆れ気味に呟く。

「いや、でも、ホント、懐かしいなぁ…
 マジでコメンテーターやらないか?…」

 懲りない男である…

 この稲葉ディレクターとは、やはり、あの8年前に『六本木クラブJ』で知り合ったのだった…

 ある意味あの『三山蓮』とはまた違った感じの、いや、今となっては、どちらかといえば比較的軽めな黒歴史の存在感といえるのであるのだが…

 だがなぜこうも連日の様に、そして今更こうした過去の黒歴史時代の男達が現れてくるのであろうか?…
 わたしは、その疑問を強く感じてきていたのである。





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