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シャイニーストッキング
第22章 ほつれるストッキング 1        佐々木ゆかり
 111 迷宮へ…

「うーん…」
 わたしの思いはますます混迷してしまい…
 手の微かな震え、心の騒めきと動揺の揺らぎが、とても治まりそうもなかった。

 だがだったら、コレは…
 このムスクの香る、黒いストッキングの存在は、残骸は、一体何なんだろうか?ーー

 いや、じゃぁ果たして、誰の残骸なのだろうか?ーー

「……」
 想いは、どんどんと迷走し、まるで、答えの無い、迷宮へとハマり、迷い込んでいくようであった。

「あ…」
 それにわたしは、100%彼、浩一さんのプライベートを知っているわけじゃないし…

「ぁ…」
 そう、わたしは…
 会社の浩一さんと、ベッドの上での浩一さんしか、ううん、それ以外は知らないんだ。

 そういえば、浩一さんの離婚の詳しい話しを訊いてはいないし…
 実家の事も、つい、お盆休みの時の彼の母親の急病の際に、チラと聞いただけしか知らないし…

「……」
 あ、いや、それは、わたしも同じだ…
 ううん、違うわ…
 わたしは、さすがに、過去のあの自分の
『黒歴史』を秘密にしたいが為に、余計にお互いを詮索しない、されない様にしていたんだわーー

 そう、わたしは、ほぼ、彼、大原浩一という男の、ほんの僅かな、表面上の事しか、知らないのだ…
 いや、知っているつもりだったのだーー

「……」
 わたしは、黒いストッキングの残骸を握り絞め、見つめ、その事実に…
 唖然、いや、愕然としてしまっていた。

 なのにわたしは、彼を愛しているなんて…
 それは、自惚れもいいことだ。

 いや、そもそもわたしは、恋愛なんてしたことがなかった…
 
「……」

 もしかしてわたしは…
 恋愛しているフリ…
 愛しているフリ…
 ただ、そんな自分に、酔い痴しれているだけ…

「…そ、そうなんだ…わ…」
 ただの、間抜けなオンナなんだわーー

 急に、空虚な想いが…
 ポッカリと心に穴を開けてきた。

「帰ろう…」
 今となっては、この黒いストッキングが誰のモノなのかなんて、どうでもよい…
  だって、コレは、恐らくは、わたしの知り得ない、知らない誰かの残骸だから…
 だから知っても、いまさら、ううん、今夜は、もうどうにもならない。

 とりあえず、帰ろうーー

「あっ」
 その時、敦子の顔が浮かんできた…
 そして同時に、松下秘書の顔もーー
 

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