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シャイニーストッキング
第14章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり
 116 杉山くんの鈍感さ

「いやぁ、佐々木部長、たくさんお知り合いがいるんスねぇ」
 エレベーターに乗るとすかさず杉山くんがそう話し掛けてきた。

「え、あ、うん、まぁね、昔の、学生時代の事だけどねぇ」

「やっぱりぃ、佐々木部長は学生時代からすごい美人さんだから、そこら中で注目浴びちゃってたんスねぇ…」
 と、杉山くんは目をキラキラさせながら話してくる。

 よかったわ、やっぱり杉山くんが鈍感で…

 昨日の俳優である『三山蓮』こと
『三山蓮太郎』による『ゆかり姫』と呼んできた呼称…

 そしてさっきの『稲葉ディレクター』による『お嬢さん』というわたしへの呼び方…
 彼、杉山くんは全く違和感を感じていないようなのであった。

『ゆかり姫』『お嬢さん』これらのわたしへに対する呼称に、普通ならば少しは違和感を感じるモノなのであろうが、この杉山くんはさすが『素人童貞』を自称するほどの恋愛オンチである様で、全く違和感を、いや、わたしの過去に対しても全く怪しく感じていないようなのである…
 それには本当に助かったといえる。

 逆に、わたしが昔、いかに美人女子大生だったのか、という想像を勝手に膨らませている位に感じるのだ…
 これが自分自身も学生時代の昔に少しは遊んでいたくらいであったならば、わたしの過去に対してあらぬ事まで想像をしても不思議ではない位の筈なのだが、彼は全く、そんな素振りさえない。

 そういう意味で、杉山くんで本当に助かった、いや、助かっていた…

「また、口止め料代わりにご馳走してあげるわよ」
 だけどわたしは、東京タワーのテレビ局を出てから、一応、念を押す意味で杉山くんをランチに誘ってあげる。

「うわぁ、マジっすかぁ、やったぁ」
 すると杉山くんは本当に無邪気に喜んできたのだ。

 余りの彼の無邪気さに
 逆にやっぱりご馳走しなくてもいいんじゃないか…
 と、思えてしまうほどであるのだが、一応、念の為である。

 だが、今日の『稲葉ディレクター』とは昨日の『三山蓮太郎』ほどの心のザワザワ感は騒つかないでいた…

 わたしの過去の黒歴史のヤバさには違いはないのであるが、やはり、寝てるのと寝ていないのとでは、つまり、マリファナでの決めセックスをしているのとしていないのとでは想いの重さが違うのかもしれない…
 




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