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シャイニーストッキング
第17章 もつれるストッキング1     松下律子
 11 秘書への経緯(1)

 それにわたしの秘書就任は、今日、この瞬間まで、彼、大原新常務には内密にしてあったから…

「松下律子と申します、よろしくお願いします」

「あ…う、うん…」
 と、挨拶したら、少しパニック気味に混乱したのも無理は無かったのだ。


 それに…
 お盆休み前までは銀座のクラブ
『ヘーラー』のホステスであったわけであるし…

 いや、つい三日程前まではわたしが押し掛けた様なカタチではあったのだが、一緒に彼の実家の田舎のホテルで一夜を過ごし、そして次の日には日光観光までもした訳でもあるから…

 そんなわたしが今日、突然に秘書だと澄ました顔で挨拶をしてきたものだから…
 慌て、驚き、動揺するのは最もであり、無理もなかったのである。


 そして案の定…

 どういうことなんだ?…

 「………」
 そんな感じで、彼、大原浩一新常務はわかりやすく狼狽えていた。

「え、あ、大原常務、どうかなさいましたか?」
 と、さすがに田中秘書課長がそう訊いてきた。

「あ、いや…」
 狼狽えながらわたしの顔を見てくる。

「え、と、この松下は、山崎専務様からの推薦ですが、何か問題が?」
 すると秘書課長がやや怪訝そうな声でそう答えた。

「や、山崎専務の推薦?」
 するとすかさず訊き返し…

「はい、さようでございます」
 その田中課長の答えに何かが思い当たったのだろう…
 少し斜め上を見て頷いたのだ。
 
 そして…
 そういう事か…的な表情に変わった。

 ようやく少し落ち着き、カラクリを理解したみたいである…

「え、と…松下とは面識は?」
 すると、やや怪訝な感じで田中秘書課課長が問うてきた。


 すると、落ち着いたあの人はすかさず…
「あ、うん、以前に本社で見掛けた…かな?」
 咄嗟にそう繕って答えてきたのだ。

「はい、本社で何度かお見かけしてますわ…」
 そしてわたしもすかさずにそう彼の言葉に合わせて応える。


「あ、さようでございますか、じゃ、とりあえずは問題は?」
 すると田中課長は合点がいったようにそう問うてきた。

「あ、うん、ないよ、大丈夫だ」
 そしてようやく彼も落ち着き…

「松下くん、これからよろしく頼むよ」
 と、そうサラっと返してきたのだ。

「はい、大原常務、これからよろしくお願いします」





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