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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 34 蒼井美冴(18)

「だからこその部長であり、準備室室長なんでしょうけどね」
 その聡明さを狙っての、残り香の仕掛けなんだ。

「……」
 わたしは、この目の前の松下さんから垣間見えた翳に、鋭さと怖さを感じてしまった。
 
 そしてそれは、その後の激白で納得してしまうーー

「あ、そう、山崎のおじさまって?」
 わたしは、敢えて突っ込んだ。

「あ、は、はい…
 美冴さんも、さすがですねぇ…」

「え?」
 
「美冴さんも凄いわ…」

「え…」
 どうやら、褒められてるみたい。

「うん、は、はい、そうですよね…これを説明しないと終わりませんものねぇ」

「……」

「実は、わたし……」

「え……」

 わたしは、この松下さんの激白に、いや、これこそ激白といえる告白に、言葉を完全に失ってしまったーー

「美冴さん『経営の神様』って聞いた事ありますか?」

「え、『経営の神様』って…
 あっ、えっ、う、うん、もちろん……」
 いちおうわたしは、某女子大の経済学部卒業であるから、もちろん、直ぐに浮かんだ。

「わたしの、おじいさまで…」

「えっ、あっ…」
 わたしは急激に、心が高鳴ってしまう。

 だって、そう、松下さんて名字が物語ってきて…

「わたし、孫なんです…」

「え…」
 つまり、松下さんの亡くなったお父様が息子ってこと…

「はい…その『経営塾』って云われた異業種交流会に、山崎専務と松本副社長がいらしたの」

「……」
 完全に言葉を失くしていた。

「特に山崎専務がおじいさまに気に入られてて、わたしは父が亡くなってからはなにかにつれ、公私共々にお世話になって………」
 そして、松下さんのお父様がお妾さんの子供であるが故に、かえって松下さんが寵愛を受け現在に至り、銀座のホステスまでの経緯を訊き…
 山崎専務との強い愛情を交えた絆までのお話しを聞いていた。

 いや、聞いてしまっていた……だ。

 なぜなら、わたしは、その内容を訊けながら…
 聞いてはいけない、重大さに気付いてしまったから。

「……」
 そして、驚きでしきりに喉が渇いてしまい、松下さんと共に、また、三杯目のカクテルをお代わりしてしまっていた。

「ふうぅ…な、なんて……」
 なんて、凄いお話しなんだろう…
 もう聞かなかった事には出来ない、熱く、重い出自の血脈ーー
 


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