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シャイニーストッキング
第17章 もつれるストッキング1     松下律子
 19 杉山くん…

 あの夜の杉山くんの様子と、あの夢見がちな目が…

 わたしが子供の時に飼っていた、ミニチュアダックスの『ビッケ』の目にそっくりと理解できたせいなのか…
 意外に慌てる事無く普通に感じられたのだ。

「あ、杉山くんおはよう、なんかごめんね、電話に出れなくて…」
 と、毅然として応えられたのである。

「だ、大丈夫っす」

 この毅然としたわたしの朝イチの対応で…
 杉山くんとのパワーバランスの関係は、今まで通りに保たれたのだ。

 そしてこの前の部長室での夜の出来事なんて、ハナから何も無かった、何も起こらなかった風の顔ができたのである…

 さすがにそれでは杉山くんもこれ以上はツッコミ様が無いらしく…
 少しだけシュンとした表情になっていた。

 だがそれで良いのだ…
 あれは本当に一夜の真夏の夜の夢であったのだ。

 いや、杉山くんにとっては…である。

 そう…
 わたしは開き直りに近い感覚になっていた。

 すると…

 なんと杉山くんも開き直りなのか、それとも若い男の本能なのか…

「さっき見たことない美人さんを見かけたんすけど?
 あのベリーショートの…」
 と、訊いてきたのである。

「あぁ、彼女ね、あれは越前屋さんと同期の伊藤敦子さんという総合職の女性よ」

「え、そうなんすか、越前屋さんと同期なんだぁ…」

 確かにあの二人を並べて見ると…
 大人と子供の差が…
 いや、艶気の差なのだろうか…
 とても同期には見えないギャップ差があった。

「あら、さっそくチェックしたんだぁ」
 と、わたしは揶揄い気味にツッコんだ。

「あ、いや、そのぉ…」

「ううん、確かに彼女は、かなりの美人さんだもんねぇ」

「あ、は、いや、あ…」
 杉山くんはしどろもどろになっていた。

「そうだ杉山くん、そうよ、チャレンジしてみたら」
 更に煽り、ツッコんでいく。

「い、いや、無理っす」

「わかんないかもよぉ…」

 だが、なんとなくわたしには分かる…

 多分に、無理であろうと…

「あ、そうだ、ところで、今日の午後一番で、お台場のテレビ局に行くからね」

「あ、はい」

「お父様大丈夫なんでしょう?」

「はい、大丈夫っす」

 そう、元々はこの杉山くんの父親からの、いや、お台場のテレビ局の報道局長である父親からの仕事依頼なのだ…



  
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