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シャイニーストッキング
第18章 もつれるストッキング2      佐々木ゆかり
 8 稲葉ディレクター(2)

「そんな昔のわたしって…
 今更、あんな昔の話しを持ち出さないでくれるっ」
 わたしはつい、語気を強めて言ってしまう。

「おうっ、それよ、それっ…
 そんな強気でガンガンくるのが堪らなかったんだよなぁ…」
 
「そんな、ガンガンって…
 それに部下が一緒の時は来ないでくれない」
 そしてわたしはいつの間にかにタメ口になっていた。

「ま、そんな怒らないでよ…
 それより『夢の国』のホテルはどうだったの?」

「あ…」
 すかさず彼は痛い処を突いてくる。

『夢の国』のホテル…

 それは、美冴さんとお盆休みに『夢の国』に行き、テンションが上がってしまい、その勢いで彼のコネクションで無理繰り手配して貰ったという経緯があった。

 だから、それを持ち出されてしまうと、少し弱くなってしまう…
 だけど、その経緯もまた、過去のわたしの『黒歴史』時代に関わったその世界的チェーンホテルの日本総支配人の息子の存在という繋がりとも云えたのだ。

「彼氏と一緒なのかと思ってたんだけど、女性同士だったんだってね」

「え、当たり前でしょう、久しぶりのお友達と一緒だったのよ…」
 やはり、調べていたようであった。

 でも、まさか、あの夜の美冴さんとの関係までは想像もしてはいないようである…

「てっきり、彼氏とか、怪しい関係とかと一緒だと思ってたんだけどなぁ…」
 と、いやらしい笑みを浮かべながら言ってくる。

「バカ、そんなな人なんかいないわよ…
 それに、あの頃とは違うんだから」

「そうみたいだね…」

 え…

 そうみたいだねって…

 やはり彼は、わたしの事をある程度は調べているみたい…

「え、調べたの、いやらしい…」
 わしはまた、語気を強めて言った。

「あ、い、いや、違うよ…
 アレだよ、アレ…
 ほら、コメンテイターをしてもらうとなるとやっぱりさぁ…

 ある程度のお嬢さんの背景も調べないとさぁ…」

「え、マジで言ってるの?」

「え、マジって言ってるじゃん…
 お嬢さんがコメンテイターやったら、あっという間に世間で注目の的になるに決まってるからさぁ…」

「呆れた…」

「いや、マジだよ、マジ…
 間違いなく視聴率も取れるし、抜群の人気コメンテイターになるよ」

 どうやら彼、稲葉ディレクターは本気だったらしい…




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