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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 76 そして…新たな一歩

 次の日にノリくんのクルマで茨城県の北のゆうじの生まれ育った街へと向かった、その街へは高速道路の連結により二時間掛からずに到着したのだ。
 そしてお墓は偶然にも海岸を見下ろせるロケーションの高台にあった。

 「ここ、ゆうじさんのご両親も眠ってるんス…」

 また親子三人で過ごせるんだ…

 「焼け跡を何度も探してようやく歯がひとつだけ奇跡的に見つかったんスよ」
 「そうだったんだ…ありがとう」

 きっとノリくんに会いたかったんだわ…
 
 「だから骨壺には歯を一つと、持ち帰った焼け跡の炭を少し入れたんス…」
 「………」
 私は黙って頷いた。

 お線香の他にゆうじの大好きだったムスク系の香りのするお香も焚く。

 ゆうじ…

 手を合わせ、目を閉じるとあの碧い目の笑顔のゆうじが浮かんできた。
 
 ゆうじ、今までごめんなさい、これから一歩ずつ歩いていくことにしたから…

 そうなのだ、私はこれから亡くなったゆうじの分まで生きていくと決めたのだ。
 そして昨日、少しだけ見え始めたゆうじへ通じる新たな道標を目印にして、私は一歩ずつ歩き始めていくことにするのだ。
 私はそれを墓前に誓う。

 墓前の眼下からは紺碧の碧い海が広がっているのが見えていた…


 
 こうしてようやく私は少しだけ新たな一歩を踏み出せたのだ。

 「本当にノリくんありがとう」
 「いや、いいっス、そんな改まんないで下さいっス」
 「でも、昨日までは本当にお墓参りができるなんて夢にも思っていなかったから…」
 「いや、そんな…」
 「本当に何もかもノリくんのおかげだわ、本当に本当にありがとうね」
 心からそう思っていた。

 「え、いや、そんな、いいっスよ」
 「これからもまた昔みたいによろしくお願いしますね…」
 「いやいや、こちらこそっスよ」

 なんかお墓参りをして心の仕えが取れたようであった。
 そして、昨日まで常に脳裏を覆っていた霧のようなモノまでもが取れたかのようであったのだ。
 身も心も軽くなったみたいである。

 そして私は『波動』のカウンターでムスク系のお香を焚き、香りに包まれゆうじを想うのだ。

 もう喪に服すのも終わりにしよう…

 「いらっしゃいませ」
 店にお客が入ってきた…



第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ 完


 


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