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第20章 もつれるストッキング4　　　　　律子とゆかり

　19　わたしを支えてくれる存在…

　そんなわたしのそのギリギリの状況を唯一救ってくれ、食い止めてくれている存在が…
「さぁゆかり室長ぉ、着きましたよぉ」
　この越前屋朋美という理知的で明るさと朗らかさを兼ね備えた彼女の存在なのであった。

　何故かわたしはそんな彼女の明るい声、声音に…
　その笑顔に…
　時には理知的な意見に…
　いや、全てに於いて、常に前向きなその姿に、いいや、旧態依然とした男尊女卑という慣習に虐げられていたあの保険会社内で一人で獅子奮迅に抗い、抵抗していたという勇気と信念をも持ち合わせているそんな彼女の全ての存在感に…
　
　多分、その彼女の魅力や存在感の全てがわたしには持ち合わせてはいないからであろう…
　わたしはこの越前屋朋美という存在感に魅了され、魅かれ、惹かれ、そして心までも支えられているのである。

「大丈夫です？
　目が醒めました？」

　そしてもう一人…
　わたしの心の支えとなっている、いや、新たに支えてくれる存在がいた。

「あ、うん、美冴さんありがとう」

　そう、このわたしの心とカラダを、あ、いや、あの二人のビアンの夜を経てのある意味本当の友情に、いいや、わたしの人生の中での初めての友達となり、このわたしというモノを理解してくれているこの蒼井美冴さんという美しく凛とした、やはり魅惑的な存在がいるのである…
　それに武石健太という、ある意味、わたしの裏側の、過去の黒歴史を十分に理解している存在もいた。

　あ、いや、そういう意味では昨夜、思いもよらなかったのだが禁断のビアンの関係を持ってしまった伊藤敦子という存在も…
　そんなビアンの関係での美冴さんと、そして彼女の親友である越前屋さんとのわたしにとっての新たな緩衝材となり、仕事の上でも素晴らしいパートナーとしてなり得る存在もいる。

　いや、今のわたしにはこの『新プロジェクト』に関わるメンバーも、従来の居場所であるコールセンター部のメンバー等々の全てが…
　こんなわたしを支えてくれる、いや、くれている存在なのだ。

　だから…
　あの彼、大原常務に対してのこんな心の揺らぎ、嫉妬心、ヤキモチなんて…

　本当に小さな、ささやかな事でしかない…
　はずなのである。