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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4     律子とゆかり
 149 昂ぶりの衝動(8)

 ネクタイを外したYシャツ姿のソファに座る彼、大原浩一常務の上に、薄いベージュのブラウスにスカート、いや、腰の上まで捲りパンストを露わにし、両脚を広げ跨り、しがみつく様に抱きついて、激しく上下に動き…
「あっ、んっ、はぁっ、はぁぁっ」
 と、喘ぎ、身悶えしている彼との二人の姿を斜め上から俯瞰的な視点からであろう…
 その淫らな姿が、脳裏に浮かび上がってきていた。

 それはまるで…
 かろうじて生き残っているもう一人の冷静な自分の、いや、いつもの凛として自らをできるだけ厳しく律しているわたしと、狂っている自分とのせめぎ合い、抗いみたいである。

 わたしは彼の、大原浩一常務専属秘書として就任するに際し、幾つか自分に対して誓いの思いの決め事を律した。

 それは…

 この常務室内では、いや、仕事絡みの時間帯では、どんなに高まり、昂ぶっても、あくまでも常務と秘書という関係の一線を引く…
 心の想い、迷い、そして甘え等々は絶対に露わに、顕にしない…
 つまりは公私混同は絶対にしない、という誓いを決めたのだ。

 だが、今、その誓いは…
 この嫉妬心からの激しい独占欲という心の昂ぶりの衝動によって、いとも簡単に、しかも、自分から破ってしまったのである。
 
 それも、佐々木ゆかりという存在感への対抗心という昂ぶりの想いによる、心の衝動を押さえ、抑え切れなかった、つまりは…
 自分で撒いたタネ、対峙するという展開にも関わらずにだ。

 本当ならば、今日、さっきのあの対峙の場面で、今まで時間を掛けて仕掛けてきたシャネルの残り香というカラクリを彼女に解かせ、自滅させるつもりでいたのに…
 これじゃ、まるで自分で、自分自身の揺らぎにより自滅してしまった様なモノである。

 そしてそんな焦燥感からの嫉妬心による独占欲という初めてに近い感情の昂ぶりの衝動により、心が暴走し、制御不能となってしまい…
 もしかしたら、本来の自分の、ずっとずっと心の奥深くに無意識に封印してきていた淫らなメスの本能に支配されたもう一人の自分を覚醒させてしまったようだ。

 そんな二人の、いや、二つの人格が、心の中で暴走し、狂い、それを抑えようとせめぎ合いの抗いを繰り返し…
 そしてそれはますます激しさを増してきて、更に彼、大原浩一というオトコにも伝わりつつあった。


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