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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4     律子とゆかり
 161 昂ぶりの後に…(11)

「…は、はい、もしもし…こちら大原常務室です…」

 わたしは、冷静に電話に出た…
 いや、出れたのだ。

 それはさっきまでの淫らで狂おしい程の、そしてわたし自身の中のナニかを壊し、弾けさせる激しい快感の昂ぶりの絶頂感の直前だったのにも関わらず、その突然鳴った常務室専用有線電話のベルの音が、スーっと、まるで打ち寄せてくる波が引くようが如くにわたしの心を…
 冷静に、そしてそれまでの激しいカラダの快感を一瞬にして醒まし、冷ましたのである。

『あ、私は人事部の入江と申します…』
 そしてその受話器の向こうから聞こえてくる、人事部部長である彼の低いトーンの声が更にわたしの昂ぶりの心のウネリを冷静に、穏やかにしてきた。

 いや、もう一人のわたしという心の中に現れた存在感が、冷静な第三の目として斜め上からの俯瞰的な視点でそう観察しているみたいでもあったのだが…
 とにかくわたしは一瞬にして驚く程に冷静になった、いや、いつものクールに装っている松下律子という秘書である自分自身を強く意識し、感じていた。

「はい、入江人事部長様ですね、わたくし常務秘書の松下と申します」
 そしていつもの如くにクールに対応をする。

『はい、実は四時過ぎに大原常務と約束をしていまして…』
 わたしはその彼の言葉に慌てて時計を確認する…
 時刻はいつの間にかに午後四時近くになっていたのだ。

 え、一時間近くシていたんだ?…
 わたしはその時間の経過に少し驚いてしまう、なぜなら、彼との淫らな交わりは体感的には三十分くらいであったから。

 それだけ夢中に、いや、狂っていたみたい…

『それで大原常務から、いちおう時間前に連絡くれって云われていて…』
 入江人事部長はこの電話の経緯を簡単に伝えてくれる…
 これは今のわたしにとって大変ありがたい事であった。

「そうなんですか…
 あ、今、常務は少しだけ外していて…
 戻り次第直ぐに折り返しさせますね」
 わたしはこの入江人事部長の言葉に必死にアタマの思考を回転させ、とりあえずそう彼に伝えた。

 なぜなら…
 わたし自身もそうである様に、ほんの僅かでもいいから心の切り替えと身支度を整える時間が欲しかったから。

 ううん、いや、彼、大原浩一常務だってそうに違いない…



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