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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4       律子とゆかり
 196 帰りのタクシー(8)

 その囁きは淡い恋心、憧憬からの告白のコトバの刺激…
 いや、軽いからかいのつもりであったのだが…
「そ、そんなぁ…」
 だから一瞬にして顔を赤らめ、言葉に詰まる。

 うわっ、ヤバい、ドンピシャを突いてしまったみたい…

「だからぁ、可愛い越前屋さんをよけいに見つめちゃったんじゃないのかなぁ…」
 と、そして更に、美冴さんが合わせてきてしまった。

「えっ……そ、そんなぁ、か、かわいいってぇ…」
 だが、すっかり昂ぶり、高まり、舞い上がってしまった越前屋さんの耳には、このわたしと美冴さんが囁いた『可愛い、かわいい』という単語しか入らなかったみたいで…

「ええ…うわぁ…ど、どうしよう…
 やっぱりぃ、そうだったんかなぁ…」
 と、すっかり舞い上がり…

「なんかぁ、大原常務のぉ、わたしを見る目がぁ、優しくてぇ…
 わたしあのシステムの進捗の話しをしていた時にぃ、もおぉ…
 胸が張り裂けそうにドキドキしちゃってぇ」
 それは、正に、越前屋さんの激白といえた。

「ううん、きっと、間違いないわよ」
 美冴さんは必死に笑いを堪え、更に煽っていく…
「もおぉ、かわいくて堪らなかったんじゃないのかなぁ…」と。

 すると、やや興奮気味に…
「だからぁ、もぉわたし、我慢できなくなっちゃってぇ…
 思わず、明日の決起集会に誘っちゃったんですぅ…」
 と、熱く、言ってきた。

「あぁ、だからあのタイミングでの誘いだったのね…」
 わたしは思わず、そう呟く。

 だって、わたしは、本当は…

「あ、はい、そうなんですぅ……
 だって大原常務さんとぜひともまた飲みたくなっちゃってぇ…」

「そ、そう…だったんだ…」
 
 ううん、でもわたしは…

「だけどぉ、なんかぁ、大原常務さんだけ誘うのも変かなぁって、だから秘書のおね、あ、松下さんもつい誘っちゃったんですぅ…」

「ふーん、なるほどねぇ…」
 と、美冴さんは納得した感じで応えた。

「そ、そうなんだぁ………」

 するとすかさず敏感な美冴さんは、そんなわたしの微妙な声音の変化に気づいたらしく…
 わたしに顔を向け、そして、また再び、さりげなく、自らのストッキング脚を寄せ、触れてきたのだ。

 それはまるで…
 自称ストッキングラブという美冴さんならではの、触れ合いからの所作といえた。





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