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シャイニーストッキング
第21章 もつれるストッキング5 美冴
16 『カフェバー波道』
カラン…
アイビーの蔦が絡まるやや色褪せた木製のドアを開けて店に入ると、控えめなドアベルの鈴が静かに鳴った。
そして一歩、店内に入ると静かなレゲエの調べと微かに漂うムスクの甘い香りが、心に小さな波紋をゆっくりと広げてくる。
あ、美冴の香りだ…
私はどうしても、このムスクの甘い香りから
『蒼井美冴』という女を、彼女特有の蒼い翳を、イメージしてしまう。
まさか…な………
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
するといつものオーナーの彼とは違うスタッフが迎えてくれた。
「あ、うん、あれ、オーナーは?」
なんとなく一人客という照れからなのか、思わずそう訊いてしまう。
「はい、オーナーは今日は私用で、まだ暫くは戻らないかと…」
スタッフは知り合いなのか?、みたいな顔をしてきたから…
「あ、うん、いや大丈夫、カウンターいいかな?」
そう応えた。
「どうぞ…」
私はそう案内され、入り口からは観葉植物の鉢で陰になっている、カウンターへと導かれる。
カウンターの右端の席には、壁の方を向いている女性が一人で座っていた…
「ありがとう」
スタッフにそう告げ、席に座る。
この店のやや照明を落とした感じと静かな客の雰囲気に、なんとなく心が落ちつき、和んでくるようだ…
「とりあえず、ワイルドターキーのロックを…」
と、オーダーし…
「ふうぅ……」
と、吐息を、いや、ため息か…
今日は新潟出張の朝から一日中、色々あった、いや、色々あり過ぎた。
かチャ、シュッ…
咥えたタバコに懐から出したジッポーライターで火を点け…
「ふううぅぅ…」
煙を吐き、一息つくと、ゆっくりとニコチンがカラダ中に染み巡り、少し、心のハリを緩めてくれるような感覚を感じる。
すると…
「うふ…
あら、ずいぶんな……ため息だこと……」
「えっ……」
そう、不意に、二つ席隣の壁際に座っていた女から…
あ、いや………このややハスキーな声は…
「こんばんは………」
「あ……」
目の前の、ロックグラスの氷が『キン』と鳴き…
蒼井美冴が妖しい目で微笑みを浮かべ…
私を見ていた。
カラン…
アイビーの蔦が絡まるやや色褪せた木製のドアを開けて店に入ると、控えめなドアベルの鈴が静かに鳴った。
そして一歩、店内に入ると静かなレゲエの調べと微かに漂うムスクの甘い香りが、心に小さな波紋をゆっくりと広げてくる。
あ、美冴の香りだ…
私はどうしても、このムスクの甘い香りから
『蒼井美冴』という女を、彼女特有の蒼い翳を、イメージしてしまう。
まさか…な………
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
するといつものオーナーの彼とは違うスタッフが迎えてくれた。
「あ、うん、あれ、オーナーは?」
なんとなく一人客という照れからなのか、思わずそう訊いてしまう。
「はい、オーナーは今日は私用で、まだ暫くは戻らないかと…」
スタッフは知り合いなのか?、みたいな顔をしてきたから…
「あ、うん、いや大丈夫、カウンターいいかな?」
そう応えた。
「どうぞ…」
私はそう案内され、入り口からは観葉植物の鉢で陰になっている、カウンターへと導かれる。
カウンターの右端の席には、壁の方を向いている女性が一人で座っていた…
「ありがとう」
スタッフにそう告げ、席に座る。
この店のやや照明を落とした感じと静かな客の雰囲気に、なんとなく心が落ちつき、和んでくるようだ…
「とりあえず、ワイルドターキーのロックを…」
と、オーダーし…
「ふうぅ……」
と、吐息を、いや、ため息か…
今日は新潟出張の朝から一日中、色々あった、いや、色々あり過ぎた。
かチャ、シュッ…
咥えたタバコに懐から出したジッポーライターで火を点け…
「ふううぅぅ…」
煙を吐き、一息つくと、ゆっくりとニコチンがカラダ中に染み巡り、少し、心のハリを緩めてくれるような感覚を感じる。
すると…
「うふ…
あら、ずいぶんな……ため息だこと……」
「えっ……」
そう、不意に、二つ席隣の壁際に座っていた女から…
あ、いや………このややハスキーな声は…
「こんばんは………」
「あ……」
目の前の、ロックグラスの氷が『キン』と鳴き…
蒼井美冴が妖しい目で微笑みを浮かべ…
私を見ていた。

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