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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 103 昔に…

 私は罪悪感が胸に湧いてこないことに気が付いたのだ。
 そうか、尖っていくと決めたからかもしれないな…
 冷蔵庫からビールを取り出して飲み、この眼下に広がる東京湾の夜景を見ながらそう感じていた。
 律子のおかげでようやく完全に開き直れたのだと思う…
 そして今度は、後ろを振り返って寝落ちしている律子を見る。

 難しく考えないで気軽に抱いてくれればいいと云っていた…
 だが果たしてその言葉通りに甘え、自分の欲望のまま気持ちの趣くままに、彼女を抱いてもいいというのか。
 そうなるとこれから起こるであろう色々な出来事や事象、それによる様々な想い等に彼女を巻き込んでしまうのではないのか…
 それ等の様々な想いが湧いてくるのである。

 恐らくそれを本人に訊くと
 それで構わない…
 と、応えてくるのはわかっていた。
 なぜなら律子は間違いなく
 わたしは銀座の女ですから…
 そう、その一言で済ませくるのは明白なのであるからだ。

 だが、だけど…
 こうして3度会って過ごし、2度抱いた時に律子から伝わり感じてきた想い等を、そんな、銀座の女、だからという簡単な言葉で済ませてはいけない様に思えるのだ。
 銀座の女、いや、律子の想いはそんな彼女の言葉通りとは違い決して軽いモノではない筈である、と、私には思えてならないのであった。

 しかし…
 何をどういっても、結果的には
 恋人であり、大切な仕事のパートナーである愛して止まないゆかり
 不思議な想いに導かれた禁断の、黒い女、の美冴
 銀座の女、の律子
  …等々、現実的に、もう消す事のできない、戻れない関係を結んでしまったのである。
 そしてもし、それらの3つの関係の1つでも壊してしまったら3つの関係、いや、恐らくはプライベートどころではなく、仕事迄をも、つまりは私の全てを壊してしまうのだろうと思われるのだ。

 だからもうこれからは、開き直って、いや、女、酒、仕事の全てに於いて尖って生きて行かなくちゃならないのだ、と、自分自身に深く戒めて誓うのである。

 そうだ、これからは、ワイルドに尖って生きていくのだ…

 そしてふと、思うのである

 何てことはない、ただもう1度、昔のあの頃に戻ればいいだけの事さ…



第5章黒いストッキングの女4 部長大原浩一
       
         完

 

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