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第6章 黒いストッキングの女5　　　　　課長佐々木ゆかり

　2　面談の騒つく想い

　わたしは黒い女こと蒼井美冴の存在をどうしても意識をしてしまう事が止められないでいた。
　そして明日はいよいよ、黒い女、と面談の予定であるのだ。
　この前に笠原主任からの正社員雇用制度への推薦があって、形式上どうしても断れなかったのである。
　どうせまた、にべも無く断ってくる事は容易に想像はできるのだが、笠原主任の手前もあったのだ、だから仕方なくその面談をする事にしたのだが、わたしには何となく不安な気持ちが湧いていたのであった。
　それはわたしが彼女を目の前にすると、なぜか、どうしても冷静でいられなくなってしまうことなのである。
　その事は表面上には決して出さないつもりではあるのだが、きっと目には現れてしまっているはずなのである。
　そしてその目の事は、きっと黒い女、蒼井美冴は認識している筈なのだ。
　だから、本当の本音はマンツーマンでの面談などしたくはないのだが、笠原主任を同席させる訳にもいかなかったのだった。
　だが、もう一つの違和感の想いもあったのだ、それは、そんなザワザワと騒めく想いがあるのにも関わらず、なぜか、嫌だという嫌悪感がないのであった、逆にそれが違和感に感じていたのである。
　そして本当は、その感じている違和感の真の意味を何となくだが、判っているような気もしていたのだが、それは現時点では認めたくはないし、考えたくもなかったのだ。

　とりあえず今日、大原部長とランチの約束が出来たのだ、その時に少しだけ話してみよう…
　黒い女の件に関してはなぜか部長に甘えると心が少しだが、落ち着くのであった。
　そしてとにかくわたしはランチが楽しみになり、そしてどこのお店にするかを考え始めていたのである。
　
　何となくザワザワがワクワクに変わっていったのだ…


　部長が午後からも吸収合併する保険会社の人事部との会議の都合があるので、この会社の立地である汐留で最近できた商業ビルの中の日本料理店をわたしは今日のランチの店として選んだのである。
　最近はほぼ洋食なので久しぶりの和食は楽しみであったのだ。
　そしてわたし達はこの和食店の個室に入り、まずは部長と仕事の話しを始めていた。

「ええっ、国家公務員上級試験を合格してるのっ」
　ランチを食べながら、今度吸収合併する保険会社にいる、総合職の越前屋朋美の経歴を聞いて驚いていたのだ…