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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 3 ネクタイ柄

「ええっ、国家公務員上級試験を合格してるのっ」
 ランチを食べながら今度吸収合併する保険会社に総合職として在籍し、部長にそのキャリアと気概を認められたというその越前屋朋美の話しを聞いて驚き、思わず感嘆してしまっていた。

 その彼女の経歴がもの凄かったのだ。
 東京大学経済学部を卒業という事と、数々の保険資格等を取得している事は事前に貰ってあった異動人事のリストには書いてはあったのだが、最難関である国家公務員上級Ι種試験に合格したがキャリアの道を蹴ってまでこの保険会社に就職したという部分は全く記載されていなかったのである。

「それって霞ヶ関の官僚、つまり超エリートじゃないですかっ、それを蹴って…」
 日本のエリートコースを無下にして、保険会社とはあり得ない…と、わたしは言った。

「そうなんだよ」
 そんな変わり種とは言えるのだが、彼女はその保険会社の旧態依然とした社内の慣わしにより、かなり疎外されていたのだそうであった、本来ならば、彼女のキャリアと資格等を鑑みたならば、その保険会社にとって将来の幹部候補としての価値ある存在のはずなのである。

「でも、本当にその扱いは非道いですね」
 吸収合併したらその根本から変えなくてはならないと部長は話してくるのだ。

「その越前屋さんて、名前も珍しいけど、面白そう、早く会ってみたいです」
 その想いは本音であった。
「ああ、まあ、ゆかりの下に置くし、どっちみち慌てなくても来週以降には会えるからさ」
 そうなのだ、いよいよ来週半ばに吸収合併の発表会見があるのだ。

「ところで…」
 わたしはそう言ってジィッと部長を見る。
 今日、初めてこの店で落ち合ってからずっと気になっていた事なのだが、その越前屋朋美の話しできっかけが逸れてしまっていたのだ。
 だが、ここでようやく追及する。

「なんか…趣味変えたんですか…」
「えっ、なにが」
 部長が急にオドオドとあからさまに動揺をしてきた。

 どうしようかな…

「そのネクタイ…」
 わたしはそう言って手を伸ばし、部長のネクタイを手に持った。

「えっ」
 部長の目が泳ぐ。

「いつからこんな趣味を…」
 わたしは敢えて冷たく言い放つ。

「あっ…」

 部長の締めているそのネクタイの表面の柄が、某夢の国の有名なアヒルのキャラクターの顔なのだ…






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