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第7章 絡まるストッキング 1

　3　ブラック

　ブー、ブー、ブー……

　「…………うう…」

　８月３日日曜日午後３時30分
　携帯電話が着信していた。

　はっ、誰だ、ゆかりか…
　私はまだ覚醒していない寝ぼけた思考でそう思いながら、慌てて携帯電話を手に持ち、画面を見る。
　画面には『ブラック』と表示されていた。

　ブラックって、誰だ…
　一瞬考える。

　あっ、美冴だ、蒼井美冴だ…
　そう、この前電話番号交換した際に、万が一ゆかりに見られたらマズいと思い、登録を『黒い女』だから『ブラック』にしたのだ。
　そう思い出した途端に目が覚めた。
　そしてゆかりではなく美冴からの電話であるという事に、少しザワザワとしてしまうのだ。

「は、はい…」
「もしもし、わたしです、蒼井美冴です…」
　そのややハスキーな彼女の声を聞いた途端にあの脚フェチを刺激してきた魅力的な逢瀬が脳裏に蘇えってくる。

「今電話、大丈夫ですか」
「ああ…」
　そう返事をしながら何気なく時計を見る。

　約10時間も寝ていたのか…
　と、少し驚いた。

「今から少し逢えませんか…お茶でもいかがかなって…」
　その美冴の言葉を聞いた途端に急激に空腹感を覚えたのだ。
　
　お茶か、ついでに軽く何か食うか…
　そう思い
「ああ、いいよ、構わない…」
　私は返事をする。

「じゃあ…」
　美冴は私達が出会ったカフェ『波道』を指定してきたのだ。

「ああわかった…」
　私は30分程で行けると返事をする。

　あそこなら歩いて行くか…
　あの店ならそこそこ食い物もあったし、それに構えないで気楽に居れる、問題ない。

　それにしても約10時間も寝ていたのか…
　確かに仕事の疲れと、連夜の逢瀬の疲れもあった、その位寝たとしても仕方ない、それに熟睡もできたのだ。
　カラダも少し軽くなった気がする。
　そして電話の内容がこれだったので、胸のザワザワは落ち着いていた。
　そう考えながら着替えて、歩いて向かう。

　外は相変わらずに強烈な暑さと蒸し暑さであった、思わず歩いて向かう気持ちが後悔してしまう程であったのだ。
　だが、すぐにそんな後悔の気持ちが、驚きと感動に変わったのである。

「あっ…」
「あら…」
　偶然に待ち合わせのカフェ『波道』の前で彼女とばったりと会ったのだ。
　そして彼女の姿を見て驚いたのである。

　えっ、まさか…