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シャイニーストッキング
第7章 絡まるストッキング 1
 28 唯一の挫折

 どちらかといえば就職し社会人になってからも、ほぼ挫折なく順調にこうしてキャリアアップを重ねられてきているので、まだまだ恵まれているのであろう…
 とは、この、今のわたしの愛する男である大原浩一部長という存在を知り、関わってから痛切に実感したのである。

 そして思い返せば今のわたしがこうしたキャリアアップした地位にいられているのは、大原部長のお陰であると言っても過言ではなかったのであった。

 わたしの初めての挫折とは、離婚と、その影響による外資系の第3営業部時代にやらかした大失敗といえる…

 そしてわたしの大原部長に対する想いの始まりは、その時の大失敗を上手く帳消しになる様に動いてくれ、失敗を無かった事にまでフォローしてくれた当時は第2営業部課長であった大原浩一という存在を知った事からなのである。

 初めての挫折かぁ…

 わたしは部長を待ちながら、甘いカクテルを飲み、目の前のライトアップされた東京タワーをボーっと眺め、そんな過去を想い返していたのだ。
 
「待たせて悪かった…」
 その時部長が後ろからそう声を掛けてきたのである。

「いえ、そんなに待っていませんよ」
 わたしは部長に逢えたという昂ぶる気持ちを押さえ、出来るだけ落ち着いた感じで応えたのだ。
 だが、そこには黒いポロシャツとチノパンという珍しくラフな格好の大原浩一部長が、にこやかな笑みを浮かべて立っていた。
 そんな彼の姿を見てわたしの心の昂ぶりは、一気にハネ上がったのである。

 ああ、浩一さんに逢えた…

「ワイルドターキーをロックで…」
 部長はカウンターに座るなり注文した。

 彼の、浩一さんの顔が見れて本当に嬉しい…

「おっ、意外にスッキリした顔だなぁ…」
 もっと疲れ気味かなと思っていたよ…
 そう、わたしの顔を見て言ってきた。

「なんか昨夜良く眠れたんです」
「そうなのか、実は私も久しぶりに熟睡できて…」
 10時間も眠れたんだよ…
 と、嬉しそうに話してきたのだ。

「色々とお疲れでしょうし…」
「えっ、いや、ゆかり程ではないさ」
 嬉しい言葉である。

「あっ、そういえば昨夜、笠原主任と…」
 笠原主任と女二人で横浜中華街で食事をして色々話してきたんだ…
 と、わたしは語り始めたのだ。






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