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シャイニーストッキング
第7章 絡まるストッキング 1
 76 プロの銀座の女

「まあ、律っちゃんもプロの銀座の女ですから上手に対応はしてますけど…」
 と、内情と律子の想いを理解しているママがそう話してくる。

「まあね、お金使ってくれるから…」
 どうやらママ的にも、あのお客はイマイチ好きなお客ではないようであるのだ。
 客商売、水商売のつらいところなのであろう。

「大原くんも内心穏やかじゃなくなりそうだな」
「え、あ、まあ、そうですね…」
 とりあえず山崎専務に合わせて返事はしたのだが、事実、少しだけ気持ちは揺れていたのである。

 嫉妬なのか、まさか…
 だが確実に心は波打ってはいたのだ。

 なんか私は本当に欲深くなったみたいだな…
 ゆかり、美冴という二人の美しい女を持て余す程なのに、更に律子までをも欲して止まないのである。
 そんな自分に呆れてもいた。

 だが、ふと、律子の方にチラリと目を向けると、彼女は隣の二代目若社長の相手をしながらも私を見ているのに気付いたのである。
 その律子の目は、私にはまるで泣いているような目に映っていた。
 しかし彼女はママのいう通り
 プロの銀座の女…
 なのである。
 
 そのプライドに満ちた毅然としている彼女の姿は、私には美しく見えていたのだ。

 さすがだ、私もああ有りたい…
 何やら律子に教わってしまった感じがしたのである。


「ところで大原くん…」
 山崎専務が話してきた。

 今日の大原くんの話しで、既にかなりの資産運用管理部の常務派の数人が泣きを入れてきているらしい…
 そう言ってきたのだ。

「やはり、そうですか…」
 まあ、大体メンツは分かりますけどね…

 既に各部署に山崎専務の直属のスパイがいるそうなのだ、だから彼らの動揺は手に取る様に掴んでいるらしい。

 やはり、山崎専務は恐い…
 まだ、私など山崎専務の傀儡でしかないのである。
 
 この先の事を考えると、いや、ゆかりのこの先のキャリアアップの事を考えると、絶対に山崎専務を裏切る行為は出来ない、そして絶対に失敗は出来ない…
 改めて思い知ったのだ。

 カタチは違うけど、律子の様にプロに徹していかなくちゃならない、じゃないと簡単に流されてしまう…

 やはり昔の様に尖って、ギラギラに、そしてワイルドに戻らなくちゃ、この先の大きな波は超えられない。
 そう、改めて思っていたのである。 



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