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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 9 山崎専務からの誘い

 ゆかりと二人きりでの食事は、先週の汐留でのランチ以来であった。

 ゆかりはすごく楽しそうでハイテンションになっていた。
 そしてすごくおしゃべりになっていたのである。
 食事中にこんなにしゃべるのも初めて見た位の事であったのだ。

 昨夜のカラオケの話しや、溯る事、笠原主任と二人で横浜の中華街に食事に行った時の話し等、次から次へと話してきたのであった。
 また焼き肉も沢山食べたのだ。
 
「はあぁ、美味しかったぁ、もうお腹いっぱいです…」

「そうだな、私もつい釣られて食べ過ぎてしまった…」
 時間は既に10時に近い。
 
 ブー、ブー、ブー…
 その時、山崎専務からの着信が入る。

 一瞬、ゆかりは暗い顔になる、だが、今は山崎専務の電話だけは無視は出来ないのだ。

「はい、お疲れさまです…」
 今から銀座のお誘いの電話であった。

「はい、今からですか…」
 私はゆかりの顔をみる。
 一瞬、悲しげな顔をしたのだが、黙って頷いてきたのだ。

「じゃあ、伺います…」
 そう言って電話を切った。

「仕方ないですから…」
 そう呟いたのだ。

「それに、お盆休みがあるし…」
 その自分の言葉で、少しだけ気を取り直したようである。

「うん、サラリーマンだからな…」
 そう言うしか私にはなかった。

「そうよね、それに、まだ終わってないから…」
 我慢します…
 笑みを浮かべてそう言ってきたのであった。

 そう、まだ終わってない、つまりは生理中たがら、出来ないという事なのである…
 そして通りに出てタクシーを拾う。

「じゃあまた明日です…」
 ゆかりはタクシーの後部座席に座り、窓を下ろし、そう呟きながらキスしてきたのだ。
 お休みのキスである。

「う…ん、また明日…」
「あ、そうだ、シャネルのお姉さんによろしくです…」
「あっ、ああ…」
 そんなゆかりの必死な嫌味にドキッとしてしまう。

 シャネルのお姉さんか…
 私はゆかりの乗るタクシーを見送りながら、ふいに、ホステスである松下律子の顔が浮かんできていた。

 ゆかりは異常に勘が鋭いのだ、気をつけなければ…

 遠ざかっていくテールランプを見ながらそう思っていたのである。





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