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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 10 山崎専務の存在

「はあぁ、美味しかったぁ、もうお腹いっぱいです…」
 約一週間振りの二人での食事に思わずテンションが上がってしまい、わたしはこれでもかとおしゃべりをし、焼き肉を食べ、生ビールを3杯も飲んでしまったのだ。
 多分、彼、大原浩一本部長と付き合うようになって初めてというくらいに話しをした、いや、おしゃべりをした。
 途中であまりにも自分のハイテンションに気付いたのだが、お酒の酔いのせいもあったのだろう、なぜか抑える事が出来なかったのである。
 そして本部長も今夜のわたしのこのハイテンションにはもちろん気付いているのであろうが、嬉しそうににこやかに笑い、相づちを返してくれ、わたしに合わせてくれていたのであった。
 こんなわたしに自分自身が違和感を感じるくらいであったのだ。

 やはりわたしは変わってきているのだ…
 彼の顔を見てそう想っていた。


「そうだな、私もつい釣られて食べ過ぎてしまった…」
 ふと時計を見ると既に10時に近い。
 

 ブー、ブー、ブー…
 その時彼の携帯電話に着信が入る。
 多分、山崎専務からであろう。

 その着信で一瞬のうちにわたしは素にもどった、だが、今は山崎専務の電話だけは無視は出来ないのだ。

「はい、お疲れさまです…」
 山崎専務からの銀座のお誘いの電話であろう。

「はい、今からですか…」
 そう話しながらわたしの顔を見てくる。
 一瞬、悲しくなったのだが、わたしは黙って頷いたのだ。

「じゃあ、伺います…」
 そう言って電話を切った。
 そしてすまなそうな顔でわたしを見てくる。

「仕方ないですから…」
 わたしはそう呟いたのだ。  
 そうである、これは本当に仕方がない事なのだ、ましてや電話の相手は山崎専務なのだ、今のわたし達には絶対的な存在なのである。
 山崎専務がいるから、今の本部長であり部長なのである、これからもしばらくはお世話になるし、そして彼を足場にして更なるキャリアアップを目指すのだ。
 そんな山崎専務からのお誘いに、わたしがわがままを唱える訳にはいかない。

「それに、お盆休みがあるし…」
 
 そう、さっきお盆休みに沢山逢える、過ごせると話しをした、だから今夜、今から銀座に行ったって何て事無いのである。
 わたしはそう自分に言い聞かせた。

「うん、サラリーマンだからな…」




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