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シャイニーストッキング
第10章 絡まるストッキング4      和哉と美冴1
 55 5年前、あれから…(41)

 わたしは午前1時頃に帰宅した。

「ただいま…」

  ……………

 やはり旦那は戻ってはいなかったし、戻った気配もなかった。

 恐らく多分、このお盆休み中は戻る気もないのであろう…
 
 だが、去年のお盆休みは彼の実家にも、わたしの実家にも帰省した。
 帰省といってもここから東京のわたしの実家までは乗り換えを含めて電車で2時間弱、だから帰省という大袈裟なモノではないのであるが、今年はわたしの父親が亡くなってから5年目、だから法要とかの大袈裟なモノはない訳なのだが、さすがにお線香上げには行かなくてはならない。

 そんなことも旦那は、彼は、無視をするのだろうか…
 だが、恐らく彼は帰っては来ないであろうと思われる。

 仕方ない、明日、午後から実家に戻るか…
 そして今夜の帰り際の、和哉との会話を思い返す。



「もうこんな時間だけど大丈夫なの…」
 間もなく午前1時になろうとしていた。

「はい、大丈夫ですよ、夏休みだし」
「でも、こんな時間よ…」
「なんかバイト始めたら、急にいろんな意味で寛容になってきたんですよ…」

「ならいいけど…」
 わたしのせいで親に怒られてしまうのは申し訳なく思っていた。

「わたし明日は実家に戻るかもしれないの…だから…」
「あ、はい…」
 そう云うと和哉は悲しげな顔をしてくる。
 思わず母性本能なのか、胸がキュンとしてしまう。
 本当は明日どうするかはまだ決めていなかったのだ、だが、こうでもしないとわたしの、いや、和哉もそうであろう、わたし達二人の心に歯止めが利かなくなってしまうのだ。
 だから、最もらしい理由を付けて明日の逢瀬は無しにしたかったのである。

「じゃ、お休み…」
「はい、お休みなさい」
 わたし達は恋人同士の別れのように、軽くキスをして別れたのだ…

 …そんな理由も付けちゃったから実家に帰ってみるかな…
 そう思いながらベッドに入った。


 次の日、午前11時過ぎに実家へ向かい、夕方まで実家で過ごし、午後8時前には帰宅した。
 とりあえず実家には、旦那はお盆休み返上で仕事、なのだという理由にはしておいた。
 元教師の堅物の母親にはとても本当の話しなど出来やしないのである。
 そしてやはり、帰宅しても旦那の気配はなかった。

 もう寝よう…
 



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