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第11章 絡まるストッキング5　　　　　　和哉と健太

　6　記念すべきスタート

「あっ、そうそう、この質疑応答のマニュアルも凄く助かったよ、礼を言うよ…」
　手にした書類を見ながらそう話してきたのだ。

「そうですか、それはよかったです…」
　すると秘書が叔父さんに近づいてきた。

「じゃあ、わたし達はこれで失礼します…」
　ゆかり姫はその秘書の動きを見て、さっと機転を効かし、挨拶を終え、会見場から退出をする。
　そんな機転の速さはさすがであった。

　そして、今日は挨拶だけで良いのだ…
　そんな雰囲気を出していたのだ。

「あっ、佐々木くん」
　すると大原本部長が声を掛けてくる。
　そして本部長はゆかり姫に手招きをし、少し話しをしていく。

　おや…

　俺は、そんなゆかり姫の様子に少し違和感を感じたのだ。
　
　あのゆかり姫の笑顔…

　あんな笑顔見た事がないなぁ…

　まさか、そうなのか…

　俺は妙に胸騒ぎがしてきたのである。

　あの二人はまさか、そうなのか…

　だから名コンビなのか…

　だが、そうであるような、違うような微妙な感じなのである。
　だが、俺の知っているゆかり姫のあんな笑顔を見るのは初めてのような気がするのだ。

　まさか…な…

　あの唯我独尊のゆかり姫が…

　なんとなく大原本部長はイメージではないのである。

「ほら、健太、帰るわよ…」
　大原本部長と話しを終えたゆかり姫が踵を返し、すかさず俺にそう言ってきた。

　やはり、俺の考え過ぎなのかな…

　まさかな、違ったか…

「とりあえず山崎専務とも挨拶できたし、記者会見も成功だったし…」

　いよいよスタートね…

　ゆかり姫、いや、佐々木ゆかり部長はそう呟いてきたのでる。

　そうなのだ、いよいよ

「新規事業計画プロジェクト」

　が、今から、今日から、この記者会見からスタートなのである。


　1997年８月８日金曜日

　いよいよ記念すべきスタートであるのだ…