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シャイニーストッキング
第11章 絡まるストッキング5      和哉と健太
 92 もう一人…

 わたしはもうすっかり、健太に恋に落ちてしまったのである…

「大丈夫です、大丈夫っす…
 これからは、絶対に、美冴さんしか見ませんから…」
 
「嘘つき…」
 わたしは恥ずかしかったのだ。
 だが、それも本音なのである。
 しかし、わたしは知っているのだ。

 健太の、あの子犬のような目をわたし以外にも、もう一人向けている事を…

「えっ、嘘じゃないっす…」

 嘘、もう一人にも向けているじゃないか…

 それもわたしより先に、ずっと向けて、見つめている人がいるじゃないか…

「うん…わかった…」

 もう一人…

 佐々木ゆかり部長へ向けているじゃないか…

 わたしは初めて健太を見かけた時から、その彼の彼女への視線に気づいていたのであったのだ。

 憧れ、憧憬、いや、崇拝か…

 そんな目に感じ、見えていたのである。
 そして大学時代からの先輩後輩の付き合いだと訊いた時から、その健太の目の意味を理解できたのである。

 崇拝である、と…

 敢えて詳しくは訊きたくないし、知りたくもない。
 
 もしも訊いてしまったならば…

 もしも知ってしまったならば…

 今度はわたしが、佐々木ゆかり部長に対して、嫉妬心を持ってしまうかもしれないのである。
 だから敢えて知りたくはないのだ。

 せっかく、友達になったのだから…

 だからこれからも、彼の、健太の視線が、ゆかりさんに向く事だけは許してあげようと思っているのである。

 だって、健太とゆかりさんの関係、間柄の方が遙かに古いし、歴史があるのだから…

 それにわたしが割り込むべきではないのである。
 
 わたしと健太はこれからなのだ…

 過去には、やきもちや、嫉妬は、したくはないのである。
 
 だって、わたしだってそうだから…

 過去をとやかくは言われたくはないし、言いたくもないからである。

 問題は、二人のこれからなのだ…

 
「なんか、今夜の夕食分を作っといてあげようか…」

「マジっすかぁ」

「うん、マジっす…」
 せっかく食料品を買い込んだのだ、料理もしたくなっていたのである。

「いちおう、元主婦だからね…」

「あっ、じゃあ、肉じゃががいいっす」

「うん、材料はある、オッケー」

 そしてわたしは料理に腕を振るうのだ。

 これも約二年振りである…





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