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第11章 絡まるストッキング5　　　　　　和哉と健太

　93　姉の…

「ただいまぁ…」
　わたしは健太のマンションで、今夜の夕食のおかずを３品程作り置きをして、本当は帰りたくはなかったのだが、午後５時半位に帰宅をしたのだ。

「おかえり…」
　するとリビングから３つ歳上の姉の美鈴が顔を出した。

「あ、お姉ちゃん…」

「あっ、ホントだ…」
　姉はわたしを一瞥するなりそう言ったのだ。

「本当に、お母さんの言った通りに戻ってるぅ」
　そう、やや唖然とした感じでそう言ってきたのだ。

「えっ、な、なによ」
　わたしはその言葉に少し動揺してしまう。

「いやね、お母さんが、アンタが元に戻ったからってさ、電話で言ってきたからさぁ…」
　だから、わざわざ見に来たのよ…
　と、言ってきたのである。

　見に来た…

　確かにこのわたしの『黒い女』時代には、この姉にも相当な迷惑と心配と心労を掛けてきたのだ。
　よく母親の事が心配だから…
　と、そう言いながらわたしの様子を、事ある毎に、見に来てくれていたのである。

　ゆうじの後を追って死ぬんじゃないのか…
　と、真剣に、本気で、心配してくれていたのだ。

「なんか…
　昔に戻ったというよりは…
　若返った…みたいだわねぇ」
　と、安堵の笑みを浮かべながら、そう言ってきたのである。

「もお、お姉ちゃんったら、やめてよぉ…」
　本当に心配を掛けたのである、だからなんとなく会わす顔がないような照れ臭い感じであったのだ。
　
「でえ…
　戻った途端にあの○○○商事会社の正社員になって、新規事業関係に配属されて、主任になったんだってぇ？」
　いきなり姉はまくし立ててきた。

「そんな激動の展開って、いったい、どういう事なのよぉ？」
　と、驚きの声を上げてきたのである。

　確かに激動の展開である…

　そして、その流れは激流過ぎて、わたし自身もよく把握し切れてはいないのだ…

「うん、よく、わからないの…
　気づいたら…こうなってて…」

「だってアナタ、そのコールセンターの派遣社員だったんだよねぇ？」
「うん…」
　わたしは頷く。

「元に戻ったのと、正社員はどっちが先なの？」
「うーん、ほぼ同時かなぁ…
　日曜に戻って、月曜日に正社員になって、木曜日に主任になったの…」

「そ、そうなんだぁ…
　でもさぁ、○○○商事株式会社っていったらさぁ、一流会社よねぇ？」