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胡蝶の夢
第10章  心無いモノなら







僕の事を捨てた家にも、この忌々しい黒崎家にも今更義理立てなんて必要ない。


そもそも、僕の恨みはその二つにこそ向けられているのだから。



「瑞貴様…、失礼ながら私はこのパーティーに貴方が出席させる事を良しとしておりません。直弥様にも再三反対の意をお伝えいたしましたが、お聞き入れくださいませんでした。けれど現に私が危惧した通り、貴方は直弥様にとって害となる事をされようとしている様子。無礼とは承知ながら、私がこちらにて直接貴方に枷を御与えする事を御許し下さい」



言うなり寛継はなぞるように僕の首筋を擦り上げた。


突然の事に全身に鳥肌が立つ。



「ちょ…何してっ…」



動こうとするとそれにあわせて捻り上げられた右腕が傷む。



「パーティーの間、瑞貴様の行動を制限させていただきます」



反対側の首にもその手は伸ばされて、ゆっくりと這い上がる。


ヌルリと何かが塗りつけられた。


触れられた場所が次第に熱を帯びていく。



「心配はございません。これは多少身体が火照り、ジクジク疼く程度のもの。毒などではございません」



「や、やめっ…ろ」



せっかく着替えたパーティー用のシャツが乱れる。


いつの間にか自分だけちゃっかりと白い手袋をはめている寛継は自身のポケットからさらに薬剤を掬い上げた。


準備の良い事だ。


何もかも始めからお見通しという訳か。





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