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胡蝶の夢
第3章 深淵

呼吸困難も切迫の度を高めていた。
いつ意識が途切れるかも知れない。
落ちる。
もう浮き上がれないところまで沈んでいく。
暗く淀んだ底深くまで…。
高笑いだけが遠くに聞こえた。
どこか上の方から。
その時だ。
苦しさから一気に開放されたのは…。
僕を強く圧していたものの感覚が消えた。
忌々しいアイツが手を引いたのだ。
と同時に感じたのは手首の冷たい温度だった。
カシャ…
ギリギリ
両腕を頭の上で組む様に、されるがままに手錠に繋がれる。
鎖は動けない様、ピアノの足を通してある。
その間も黒崎は何か言葉を発していた様な気がする。
けれどそれは霞みがかって頭に入ってこない。
ふわふわとした意識の中で、現実さえどうでもいい様に思えた。
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