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胡蝶の夢
第3章 深淵

叩かれて熱を持った頬にひんやりとした手が触れる。
「嫌だっ」
どうしてこんな事になるんだ。
どうして僕が。
顔に、首筋に、脇腹に、指が体表を伝う度にゾクゾクとした感覚が襲い、意思と反してビクンビクンと背筋が跳ねた。
「くくっ…」
黒崎の笑いの意味が理解できるばかりに苛立つ。
反応したくないのに。
なぞらう指に圧が掛かったかと思うと、次に爪が突き立てられた。
「…うぁっ…」
不意の事に声が洩れる。
そのままゆっくりと腹部に爪が埋まっていく。
同時に唇は胸の突起をついばんだ。
ピチャッ…クチュ…
気持ち悪い。
わざと唾液をまぶして音をたて、僕に聞かせる。
「痛くされて嬉しいのか?」
黒崎の声が感覚の上辺を滑って行く。
身体が抵抗することを諦め、思考することを放棄して、与えられた刺激にのみ従順な受容機に変わるみたいだ。
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