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胡蝶の夢
第5章 有罪
私は怖くて仕方がありませんでした。
初めて自分を必要としてくれる人が現れた。
私を。
私だけを…。
誰かに必要とされる、そんな日を私は心待ちにしていたはずでした。
けれど、急に私の肩に掛かったこの重たい重石は何でしょう。
私を射貫く様な眼差しが痛い。
『期待』なんてされた事の無かった私には『責任』なんてものも無かった。
私は、のしかかった期待の重さから逃げたのです。
それが第二の罪でした。
再び私は逃げる事を選びました。
『何も見なかった』
都合の良い暗示をかけました。
蹲って小さくなって、自分の腕で作った闇の中に逃げ込みました。
腕に顔を埋めていれば何も見なくて済みます。
それからどれくらいの時がたったのでしょう。
「来い」
次に私が明かりを目にしたのは、兄に引っ張り上げられたその時でした。
「ついて来い」
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